ラーウィの研究室に召集されたアトモスのメンバーとリオンとリン。
その顔は、戦士の顔そのものだった。
「さて・・・・またあいつらが出たのか?」
セレスフィアの一言にラーウィは頷く。
「ああ。出現場所は古代巨人の墓。
そこに眠る古代最上級呪文(エンシェントマスタースペル)の呪文書に引かれたのだろう・・・・
まだ未回収の物があるのだろうな・・・早急に排除を願いたい」
「・・・・・・」
「オーケイ・・・リン!リオン!」
「はい」
「・・・・・」
セレスフィアに呼ばれたリンとリオンは、セレスフィアの方に視線を向けた。
「今回はあなたたちにも戦ってもらう」
「はい・・・・・え?」
「・・・・・・・!!」
思いもよらなかったセレスフィアの言葉に、驚きを隠せない二人。
「リンには攻撃を、リオンには回復と補助に回ってもらいたい。できるな?」
「はい。・・・・リオン?」
「・・・・・・(ふるふる)」
「大丈夫だって。そんなに気張らなくても」
「・・・・・・(こくん)」
「さてさて、あそこのカップルはほっといて・・・古代巨人の墓は遠路だぞ。
最低でも半日、この人数なら一日掛かるかもしれないがどうする?」
「大丈夫さ」
伏一貴の言葉に、洋パパは数枚の何も書かれていない紙を取り出した。
「元々、スクロールによる転移術ってのは我が家の専売特許だ。一度行った場所ならいつでも行ける」
「・・・・・・」
洋パパが目を瞑ると、紙にルーンが浮かび上がった。
「これで古代巨人の墓の大広間に行ける。あそこなら広いし野営もできるだろう」
「ありがとう洋パパ・・・・カルリラどうかした?」
セレスフィアの問いにカルリラは、
「ナんデモなイ・・・」
とだけ答えた。
「それじゃあ・・・行くよ!」
セレスフィア号令と共に、アトモスの面々は瞬時に目的地へと飛び去った。
「おい・・・・奴が居るのはその大広間なんだがな・・・」
誰も居なくなった研究室で、ラーウィは一人溜め息交じりに呟いた。
ドオオオオオン!
大地を砕く轟音が辺りに響く。
「くそっ!飛んだ先が敵の目の前かよ!」
伏一貴は慌てて敵から間合いを取った。
「まったく・・・誰だよ!こんなところに設定したのは!」
迫り来る触手を光刃剣で次々と薙ぎ払っていくラスフェル。
「それは・・・悪かった・・・な!」
洋パパも次々と独鈷を放っていくが・・・
キィン! キィン!
「くっ!こいつ硬いぞ!」
「伏!蹴り砕け!」
「それが出来るならとっくにやってる!」
伏一貴が、姿を消しては触手の辺りで出現を繰り返す。
縮地の勢いで蹴っているのだが、まったく効いていない様子だった。
「俺の槍も刺さらなきゃ意味ねぇよ!」
レッドビーが苦しげな声を上げる。
「刃が突き刺さらないな・・・『この世は所詮楽園の代用品でしかないのなら・・・罪深き者は等しく灰に還るがいい!Sacrifice!』」
セレスフィアが呪文を唱えた刹那、刃先に赤い光が纏う。
「はああああああ!!!」
ボオッ!
セレスフィアに迫った触手が刃に触れた瞬間、触手は瞬く間に灰となった。
「ぐっ・・・・」
それと同時に、セレスフィアが苦悶の表情を浮かべた。
「あれが・・・・Sacrificeか・・・」
「伏!前!」
「な・・・」
バキィ!
「ぐっ・・・・・」
触手に吹き飛ばされた伏一貴は、受身を取る事も許されずに地面に・・・・
ボヨン
・・・は落ちず、何か柔らかい物の上に落ちた。
「だ・・・だいじょう・・・ぶ?」
「お前は・・・・リオン?」
「・・・・(こくん)」
伏一貴を受け止めた物は、水を固めたような物だった。
よく見ると、リオンがそれに片手を埋めている。
「これは・・・・お前が・・・?」
「・・・・・・(こくん)」
リオンは伏一貴を降ろすと、サイドスローの要領で水塊を投げる。
ドオオオオオン!
まるで2tダンプカーが激突したような音を立てて、数本の触手がまとめて薙ぎ倒された。
「うひゃ〜・・・リオン容赦ないなぁ。僕も頑張るかな」
敵の中腹辺りまで跳ぶように上っていったリンが、敵から距離を取る。
「これをボッキリやるのは厳しいかな。ま、凹ませるぐらいは出来るかな」
リンの左手には白い玉。
「『竜王の宝玉、緑眼の眼光、・・・あ〜・・・わが左手に宿りし・・・・忘れちまった。まぁいいや。
潰れろ!ウインドプレス!』」
ドオオオオン!
リオンの水塊がぶつかった時よりは小さかったが、敵の胴体は大きく凹んでいた。
「出力は60%ってところかなぁ・・・中途半端に唱えるもんじゃ・・・ん?」
リンの目が捉えた先には、キラキラと光る粒子。
「あれは・・・・って!え!?ちょっと待って!こっちは回避手段が・・・てか、こっちくんなーー!」
ビュン!
空中に居たリンには、それの攻撃を避ける手段は無く、
「うおおおおおおおおお!」
ドォン!
「あだ!」
地面まで叩きつけられた。
「あいててて・・・とっさに風のクッション作って助かったよ・・・っと。洋パパさーん」
「どうした。何かあったのか?」
迫り来る触手をカルマで焼き払うと、洋パパは再び独鈷を投げる。
「やつの体に傷を付けたんだが・・・そこから光みたいなのが漏れてたんだ」
「光?・・・・力の固まりか?だが・・・それなら・・・・リン!」
「ん?」
「それだ。おそらくその辺に陣があるんだろう。陣さえ露呈させれば後は私の仕事だ」
「陣を引きずり出せってこと?無理ですよ。さっきのでも凹ませるぐらいだったし」
「・・・・さっきの魔法・・・中途半端だったろ」
「う」
「さっさとカルリラから本借りてちゃんと覚えろ!」
「あう〜」
リンは変な声を発しながら、カルリラを探す為に走った。
「はぁ〜・・・・(まったくエルフってのは何で魔力の流れに敏感なんだろ。普通分からないはずなのに・・・・無詠唱呪文でも覚えようかなぁ)
・・・とと、いたいた。マスター、私の魔導書は・・・」
リンの目の前に居たカルリラは、
「はぁー・・・・はぁー・・・」
胸を押さえながら、苦しそうな息を吐いていた。
苦しい。痛い。眩暈がひどい。
いくら息を吸ってもまったく酸素が入っていない感じだ。
指先は氷のように冷たい。
だけど、体は燃えているように熱い。
「・・・・・!・・・!」
誰かが何か言っている。
こっちは頭が痛いんだ。
少し黙ってくれないかな。
目だけを向けると、そいつは驚いた様に目を見開いていた。
何でそんな目で見るのだろう。
まるで化け物を見るような目だ。
そういえばなんとなく景色が赤い。
血が目に入ったのだろうか。
まったく、頭が痛いのに何でそんなことが分かる。
まったく、ワタシガミテイナイノニドウシテワカル。
ジャアコレヲミテイルノハダレ。ワタシハドコニイル。
シカシノドガカワイタナ。ナニカノミモノハ―――――
「ま、マスター?」
「・・・・」
カルリラはゆっくりと立ち上がった。
瞳は金色に輝き、目は血に浸したように赤い。
爪は獣のように長く鋭い。
それは明らかに異質だった。
この世に存在すること自体が異質だった。
「貴様、何者?邪魔よ!」
刹那、リンは地面に倒れていた。
自分の上にはカルリラが馬乗りになっていた。
「な・・・」
リンはカルリラを振り解こうとするが、万力のように締め付けられている為に身動きが取れない。
体中がミシミシと音を立てる。
「それでおしまい?なら、あなたの命もこれでおしまい」
カルリラの顔が首筋に近づく。
一瞬見えた鋭い牙、あれで噛み千切るのだろうか。
そんなリンの目の端に入ったのは高速で迫り来る触手だった。
「ぐっ!」
「ちぃっ!」
二つの声が重なると同時に
バキィ!
大木を折るような音が辺りに響いた。