第10章 地神


ラーウィの研究室に召集されたアトモスのメンバーとリオンとリン。



その顔は、戦士の顔そのものだった。






「さて・・・・またあいつらが出たのか?」



セレスフィアの一言にラーウィは頷く。





「ああ。出現場所は古代巨人の墓。

そこに眠る
古代最上級呪文(エンシェントマスタースペル)の呪文書に引かれたのだろう・・・・

まだ未回収の物があるのだろうな・・・早急に排除を願いたい」





「・・・・・・」



「オーケイ・・・リン!リオン!」


「はい」


「・・・・・」



セレスフィアに呼ばれたリンとリオンは、セレスフィアの方に視線を向けた。







「今回はあなたたちにも戦ってもらう」



「はい・・・・・え?」



「・・・・・・・!!」


思いもよらなかったセレスフィアの言葉に、驚きを隠せない二人。







「リンには攻撃を、リオンには回復と補助に回ってもらいたい。できるな?」



「はい。・・・・リオン?」


「・・・・・・(ふるふる)」


「大丈夫だって。そんなに気張らなくても」


「・・・・・・(こくん)」







「さてさて、あそこのカップルはほっといて・・・古代巨人の墓は遠路だぞ。

最低でも半日、この人数なら一日掛かるかもしれないがどうする?」



「大丈夫さ」


伏一貴の言葉に、洋パパは数枚の何も書かれていない紙を取り出した。




「元々、スクロールによる転移術ってのは我が家の専売特許だ。一度行った場所ならいつでも行ける」



「・・・・・・」


洋パパが目を瞑ると、紙にルーンが浮かび上がった。




「これで古代巨人の墓の大広間に行ける。あそこなら広いし野営もできるだろう」






「ありがとう洋パパ・・・・カルリラどうかした?」



セレスフィアの問いにカルリラは、


「ナんデモなイ・・・」


とだけ答えた。








「それじゃあ・・・行くよ!」



セレスフィア号令と共に、アトモスの面々は瞬時に目的地へと飛び去った。










「おい・・・・奴が居るのはその大広間なんだがな・・・」



誰も居なくなった研究室で、ラーウィは一人溜め息交じりに呟いた。











ドオオオオオン!



大地を砕く轟音が辺りに響く。







「くそっ!飛んだ先が敵の目の前かよ!」


伏一貴は慌てて敵から間合いを取った。




「まったく・・・誰だよ!こんなところに設定したのは!」


迫り来る触手を光刃剣で次々と薙ぎ払っていくラスフェル。




「それは・・・悪かった・・・な!」


洋パパも次々と独鈷を放っていくが・・・




キィン!  キィン!



「くっ!こいつ硬いぞ!」



「伏!蹴り砕け!」



「それが出来るならとっくにやってる!」



伏一貴が、姿を消しては触手の辺りで出現を繰り返す。

縮地の勢いで蹴っているのだが、まったく効いていない様子だった。






「俺の槍も刺さらなきゃ意味ねぇよ!」


レッドビーが苦しげな声を上げる。




「刃が突き刺さらないな・・・『この世は所詮楽園の代用品でしかないのなら・・・罪深き者は等しく灰に還るがいい!Sacrifice!』」



セレスフィアが呪文を唱えた刹那、刃先に赤い光が纏う。




「はああああああ!!!」



ボオッ!


セレスフィアに迫った触手が刃に触れた瞬間、触手は瞬く間に灰となった。





「ぐっ・・・・」


それと同時に、セレスフィアが苦悶の表情を浮かべた。







「あれが・・・・Sacrificeか・・・」




「伏!前!」



「な・・・」




バキィ!



「ぐっ・・・・・」





触手に吹き飛ばされた伏一貴は、受身を取る事も許されずに地面に・・・・



ボヨン


・・・は落ちず、何か柔らかい物の上に落ちた。







「だ・・・だいじょう・・・ぶ?」



「お前は・・・・リオン?」



「・・・・(こくん)」



伏一貴を受け止めた物は、水を固めたような物だった。


よく見ると、リオンがそれに片手を埋めている。






「これは・・・・お前が・・・?」



「・・・・・・(こくん)」


リオンは伏一貴を降ろすと、サイドスローの要領で水塊を投げる。




ドオオオオオン!




まるで2tダンプカーが激突したような音を立てて、数本の触手がまとめて薙ぎ倒された。






「うひゃ〜・・・リオン容赦ないなぁ。僕も頑張るかな」


敵の中腹辺りまで跳ぶように上っていったリンが、敵から距離を取る。





「これをボッキリやるのは厳しいかな。ま、凹ませるぐらいは出来るかな」



リンの左手には白い玉。



「『竜王の宝玉、緑眼の眼光、・・・あ〜・・・わが左手に宿りし・・・・忘れちまった。まぁいいや。
潰れろ!ウインドプレス!』」




ドオオオオン!



リオンの水塊がぶつかった時よりは小さかったが、敵の胴体は大きく凹んでいた。







「出力は60%ってところかなぁ・・・中途半端に唱えるもんじゃ・・・ん?」



リンの目が捉えた先には、キラキラと光る粒子。






「あれは・・・・って!え!?ちょっと待って!こっちは回避手段が・・・てか、こっちくんなーー!」




ビュン!



空中に居たリンには、それの攻撃を避ける手段は無く、




「うおおおおおおおおお!」




ドォン!






「あだ!」



地面まで叩きつけられた。






「あいててて・・・とっさに風のクッション作って助かったよ・・・っと。洋パパさーん」



「どうした。何かあったのか?」



迫り来る触手をカルマで焼き払うと、洋パパは再び独鈷を投げる。




「やつの体に傷を付けたんだが・・・そこから光みたいなのが漏れてたんだ」



「光?・・・・力の固まりか?だが・・・それなら・・・・リン!」



「ん?」



「それだ。おそらくその辺に陣があるんだろう。陣さえ露呈させれば後は私の仕事だ」



「陣を引きずり出せってこと?無理ですよ。さっきのでも凹ませるぐらいだったし」





「・・・・さっきの魔法・・・中途半端だったろ」



「う」



「さっさとカルリラから本借りてちゃんと覚えろ!」



「あう〜」



リンは変な声を発しながら、カルリラを探す為に走った。






「はぁ〜・・・・(まったくエルフってのは何で魔力の流れに敏感なんだろ。普通分からないはずなのに・・・・無詠唱呪文でも覚えようかなぁ)
・・・とと、いたいた。マスター、私の魔導書は・・・」





リンの目の前に居たカルリラは、


「はぁー・・・・はぁー・・・」


胸を押さえながら、苦しそうな息を吐いていた。












苦しい。痛い。眩暈がひどい。



いくら息を吸ってもまったく酸素が入っていない感じだ。



指先は氷のように冷たい。



だけど、体は燃えているように熱い。







「・・・・・!・・・!」




誰かが何か言っている。





こっちは頭が痛いんだ。



少し黙ってくれないかな。



目だけを向けると、そいつは驚いた様に目を見開いていた。





何でそんな目で見るのだろう。


まるで化け物を見るような目だ。


そういえばなんとなく景色が赤い。


血が目に入ったのだろうか。



まったく、頭が痛いのに何でそんなことが分かる。





まったく、ワタシガミテイナイノニドウシテワカル。



ジャアコレヲミテイルノハダレ。ワタシハドコニイル。



シカシノドガカワイタナ。ナニカノミモノハ―――――












「ま、マスター?」



「・・・・」



カルリラはゆっくりと立ち上がった。





瞳は金色に輝き、目は血に浸したように赤い。



爪は獣のように長く鋭い。







それは明らかに異質だった。







この世に存在すること自体が異質だった。





「貴様、何者?邪魔よ!」





刹那、リンは地面に倒れていた。



自分の上にはカルリラが馬乗りになっていた。





「な・・・」



リンはカルリラを振り解こうとするが、万力のように締め付けられている為に身動きが取れない。

体中がミシミシと音を立てる。






「それでおしまい?なら、あなたの命もこれでおしまい」




カルリラの顔が首筋に近づく。



一瞬見えた鋭い牙、あれで噛み千切るのだろうか。






そんなリンの目の端に入ったのは高速で迫り来る触手だった。




「ぐっ!」



「ちぃっ!」




二つの声が重なると同時に

バキィ!



大木を折るような音が辺りに響いた。

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