第7章 蠢動



キィン! キィン!





二つの刃がぶつかる音が練習場にこだまする。







「ほら!速度が遅くなってるよ」



片方はカルリラ。

手にはシャムシールという、斬ることに特化した海賊が好んで使う剣を装備している。





もう片方には、



「くっ・・・!」



その顔を疲労と苦痛に歪めながら剣を振るう、銀髪緑眼の少年がいた。







「カルリラのやつやけに熱心だな」





「なんか思い入れでもあるんじゃない?」






「でもあいつは只者ではないんだろ?あんな刺激的なことやって良いのか?」












数日前




「で、どうなの?ラーウィ」



カルリラが左腕をさすりながら返答を仰ぐ。





「脳波、肉体、精神共に異常はない。ただ・・・」



「ただ?」と、セレスフィア。



「これを見てくれ」


そう言うと、ラーウィは自分の前に置いてあるディスプレイを皆に見えるように動いた。






「!・・・・・これは・・・」



ラスフェルは絶句した。





「何だこの血中魔力濃度の値は!?人間の数値じゃないぞ!」



続けて伏一貴が狼狽する。





「それだけじゃない。魔法に対する抵抗力(MR)が通常値で99%、風属性に至っては100%という値だ。

・・・・・こんな値、
『神宿し』だって・・・いや、なんでもない」






「じゃあの子は魔物だというのか?」


と、早苗嬢は硝子越しに様々な検査道具に囲まれ眠っている少年に目を向けた。





「魔物だってあそこまでのものは・・・寧ろ神に近いものが・・・」



レッドビーの一言に皆、絶句した。










「う・・・ううん・・・」





周りが驚きざわめく中、うめき声を上げた少年がゆっくりと起き上がった。








「おはよう・・早速で悪いけど名前とか教えてくれないかな」

ラーウィがマイク越しに話しかける。




「rin・・・・・」



「リン?」



「だめだ・・・頭・・痛い」




「そうか・・・」








「で、誰があの子の傍に居るんだ?」



「やっぱり拾ってきたカルリラじゃないか?」




「私は構わない」





「あの子を戦えるように教育しといてくれない?また戦があった時に戦力は少しでも多い方がいい」



「分かった」



















キィン!キィン!





「これで終わりなのか!?根性を見せてみろ!リン!」




カルリラが業火の様な勢いで、リンと呼ばれた少年に斬撃を加える。






「く・・・このおおおおお!!!」




リンが、がむしゃらに放った一撃が暴走を起こした。







「!!よけろ!」






側で様子を見ていたイリューザーが慌てて叫ぶ。






体を無理やりにひねり、その斬撃を避けたカルリラの脇を鋭い何かが横切った。



それはカルリラの髪を数本斬り、そのままの勢いで壁に向かいそして・・・






ヒュウ!





風きり音と共に壁に残る斬撃の跡。


しかし、それはリンから遥かに離れた壁に大きな傷跡を付けていた。







「い、今のは?」




カルリラは腰を抜かし、やや上ずった声でリンに尋ねた。






「・・・・・」




しかし、放った当人のリンも何が起こったのか解っていない様子で呆然と壁を見つめていた。


















暗い神殿




その奥に揺らめく二つの人影。







「・・・・そうか・・・・」




片方が重々しく口を開く。







「はい・・・・土・火は完全に、水は不完全に、風に至ってはまったく・・・」



もう片方の男は俯きながら説明をし、相手の様子を伺っている。







「・・・・・まぁいい。風の担当は・・・・
『刻印の剣王』か・・・・魔法関係に強くなれと言ったはずだが・・・」




「いかがしますか?」




「もうなったものは仕方がない。直ちに
『焦熱の獄卒』『大紅蓮の女王』『暗黒の使途』に陣を発動させろと伝えろ」




「はっ」



短く返事をし一礼した後、男はテレポートでその場から消えた。






「さて・・・私はどうするかな」




その場に残された男は、不適な笑みを浮かべながらゆっくりと玉座に座った。




















「みんな!直ちに来てくれ!」




ラーウィの緊急WISを受け、アトモスの仲間は研究室に集まっていた。





「何だ!」



伏一貴は不機嫌そうにラーウィに詰め寄る。




「これを見てくれ!」



ラーウィは少し機械を操作しながら、ディスプレイを全員に見える位置まで移動させる。





映しだされたそれは、オーレンの近くにある大氷湖の風景だった。



しかし、その大氷湖の上に大樹殻何本も長大な触手を生やした不恰好な物がうごめいている。





「これは?」




「おそらく魔力で体を構成している。ほとんど水だろう。だが、先鋒の攻撃が殆ど効かない。いくら斬っても焼いても再生してしまう様だ」



ラーウィが険しい顔でキーボードのボタンを押すと、斬られた触手が瞬時に再生する映像に画面が切り替わる。






「こいつは少し厄介だな」



ラスフェルが難しい顔で画面を睨む。





「だが、この手の敵には必ず核となる部分があるはずだ」


伏一貴が余裕そうに腕を組みながらにやりと笑みを浮かべた。





「この手の敵なら魔力を剥がせば核が丸見えになる可能性が高い。私に任せてほしい」


と、洋パパが一同に鋭い視線を向けた。





「よし・・・では行くぞ!」



セレスフィアが片手を上げると、全員がまばゆい光に包まれてオーレンへと飛んだ。

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