第2章 安寧
8司祭が崩壊してから数年、世界には一つの異変が起きていた。
それは・・・・
「まったくモンスターを見ませんね」
「そうね・・・」
モンスターがすっかり居なくなったのだ。
地上はもちろんのこと、ダンジョンや孤島、ディアド要塞からも魔物は消えてしまった。
「ここまで平和だと、なぜこの連合に入ったのか少し忘れそうになりますね」
スタパラが紅茶を飲みながら言う。
「油断するな!ここはディアド要塞、いうなれば最前線だぞ」
スタパラの言葉をラスフェルが戒めるが、その声には覇気がない。
アトモスの血盟員たちは、ダークエルフに対する連合組織「血盟連合」に入っていた。
本来は戦争を好まないのだが、連合に入ることが義務化された今、仕方なく入ったのだった。
しかし、ダークエルフどころかモンスターまでいなくなってしまい、連合はやることが無い日々を過ごしていた。
「今日は何する?」
ラーウィはソファーの上に寝っ転がりながら、とりあえず暇つぶしを探している。
「そうだな・・・・やる事も無いし剣の練習に付き合ってくれよ」
剣を抜こうとしたラスフェルだが、
「ラスとやると剣が折れるから嫌」
と、あさっり却下されてしまった。
「・・・・・」
伏一貴は二人のやり取りを横目で見ながら、無言で爪や双剣を磨いている。
一方、別の一室では・・・・
「・・・・・ふう。諜報部隊からの情報は無し・・・か・・・」
セレスフィアがPCの画面を見ながらため息をついていた。
「まったく・・・・このような事では連合は自然消滅するぞ」
セレスフィアの吐き出す言葉には、昔のような丸さや優しさは消えていた。
あの日の事が何度も頭の中をよぎる。
あの日誓ったのだ・・・もう・・二度と・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
きつく唇を噛み締めたまま、セレスフィアが瞼を閉じたのと同時に、
「姫・・・今日は・・・」
早苗嬢が部屋に入ってきた。
「下がれ!今は何も新しい情報は無い、待機していろ」
だが、セレスフィアの声にビクッと肩を震わせ、早苗嬢は慌てて部屋を出ていった。
「・・・・・まったく・・・疲れているな私は・・・」
早苗嬢が出て行った後、セレスフィアはため息混じりに小さく呟いた。
自分でも分かっているのだ、終始ピリピリと張り詰めた空気。
血盟員たちがどこか悲しそうな目で自分を見る。
今の自分には少しも余裕など無い。
セレスフィアは何もかもを振り切るように無心で剣を振るった。
空を切るその剣の輝きは曇り、まるでセレスフィアの心を映しているかのようだった。
ジリリリリリリリリリリリリ!!!!
突如、緊急を伝えるベルが全ての部屋に鳴り響く。
「な、何!?」
慌てて剣を鞘に収めてセレスフィアは部屋を出ようとした。
「分からん!でもミーティングルームに集合だそうだ!」
タイミング良くすれ違ったラスフェルが緊迫した顔でセレスフィアにそう告げる。
「分かった、すぐ向かう!」
セレスフィアは一度部屋に戻り、壁に掛けていたアトモスの紋章をあしらった外套を羽織ると、再び部屋を出た。
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