EternalBond〜クロスローゼン〜

*プロローグ*


春の陽気の中で鳥がさえずり、花が咲き乱れている美しい庭。

お城に仕える人々の笑い声や、世間話が聞こえてくる大好きな大広間。

多くの人々に支えられた、平和で穏やかな日々を過ごしてきたお城。



しかし、その面影はもはや過去にすぎず、

今現在起こっている光景は、まるで地獄の様な有様だった。








剣の刃が、ぶつかり合う金属音。



怒声と断末魔が交差し、泣き叫ぶ悲鳴が城内に木霊する。




息苦しい程に抱きしめてくる、お母様の細い腕。


黒い集団の中で、懸命に剣を振るうお父様の大きな背中と、

お母様と私を庇う様に立っている、お兄様の険しい横顔。



逃げ惑う人々を守りながら剣を振るい、

襲ってくる刃に貫かれて、断末魔の叫びを上げ倒れていく騎士達。





恐怖と絶望の中、瞳に映った世界は、

変わり果てた人々の死体と・・・夕日の様に赤く染まった血の海。





錆びた様な鉄の匂いが嗅覚を麻痺させ、思考さえも停止させる。


地面の砂を巻き上げながら追って来る、黒く光る甲冑を纏った無数の大群。


その黒い塊の中で、一人の男がフードの陰から覗かせた不気味な笑みに、悪寒が走る。



「!!」



声にならない悲鳴は、

同時に男から放たれた、無機質な青い閃光の爆発音によって掻き消された。




衝撃波の影響で体が吹き飛ばされたのか、息が詰まって呼吸が出来ない。


ミシッという、酷く嫌な音を立てて体が悲鳴を上げる。








あぁ・・・私、死んでしまうのかな・・・。






自分でも驚く程、冷静にそう思えた。








薄れていく意識の中で感じたのは、
地面に叩き付けられる衝撃では無く、




力強く私の体を抱き止める、大きな腕の温もりだった。
















「・・・・・・・・ル様?」














「ん・・・ぅ・・・うっ」











「セシル様!!」







激しく体を揺さぶられ、私を呼ぶ聞き慣れた声に、意識が引き戻された。






「あ・・・」





「酷くうなされていましたが、怖い夢でもご覧になられたのですか?」



どうやら私は、夢を見ていたらしい。






そうだ・・・ここは宿のベットの上。





私の体を支えて、心配そうに顔を覗き込んでくるのはゼル。



ゼル=レモンドハイス。



私が物心付く前から、専属で使えている王宮騎士の近衛隊長でもある人。


今は、その面影は殆ど無い・・・というよりも、身分を隠している。








「よく覚えてないの・・・どんな夢だったのか。ただ・・・すごく悲しくて怖いの・・・」




気が付けば、涙で頬が濡れていた。



無意識に泣いていたのだろうか・・・、慣れているので動揺は殆ど無い。





「セシル様・・・」



ゼルが差し出してくれたタオルに、顔を埋めて涙を拭う。




最近、毎晩の様に見る夢。


夢から覚めると、何故か少しも覚えていない。


覚えていないというよりも、思い出したく無いと心が拒否をしている様にも感じる。








深く封印された記憶。





いくら逃げても、迫ってくる闇と恐怖。







不安を掻き消すかの様に、胸のペンダントを強く握り締めた。




胸元で光る青い石は、窓から差し込む月明かりに照らされて、淡く輝いていた。








物語は幼い少女を中心に、回り始めていた。




少女、セシル=クロスローゼンの大きな運命の糸が、少しずつ解かれようとしている。


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***作者コメント***

長い間、クロスローゼンの物語を形にしていき、やっと出来上がりました。

リネージュの世界観を4割、オリジナル設定が6割な感じの物語構成です。

長い物語を製作するのは初めての試みで、未熟な部分も多々ありますが、

クロスローゼンの物語と共に、日々精進してまいります。

プロローグの設定は、物語の中心部分になるので、とても悩みました。

今回は、一気に第1章の終わり(3話)まで書き上げたので、

もう少しお付き合い頂けると幸いです。

それでは、EternalBond〜クロスローゼン〜の世界をご覧下さい。

2007年6月14日 セレスフィア

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