ある日、アトモスのアジトに1通の手紙が届けられた。 ピンポーン♪ 「はーい」 パタパタパタパタ・・・ リリオンが外に出て応対する中、 「ゼリちゃん〜〜〜なんか一曲弾いてー」 『恥じらい』という言葉をハンマー投げでぶん投げた様な体勢で、ソファに寝転がるセレスフィア。 「嫌です。今新曲書いている真っ最中ですから・・・・・ガーヴィン、なんか良い具合の歌詞無い?」 セレスフィアの言葉を完全に拒否しなが、ら譜面にペンを走らせていくゼリアス。 「せやなぁ・・・でも俺に聞くのは間違ってると思うぞ」 アイスの棒をガジガジとかかじりながら答えるガーヴィン。 「それもそうか」 ゼリアスは苦笑いしながら、再度カリカリとペンを走らせる。 「こら暴れるな!ジッとしてろ」 その横で愛犬のブラッシングに精を出しているのはファイデス。 「ガーヴィン・・・俺の背中に『ツンデレDE』 って張り紙貼ったのお前だろ」 クシャクシャになった紙を握り締めてながら、鬼の様な顔でガーヴィンへと歩み寄る伏一貴。 「果てさて何のことか・・・では私はこれで・・・失礼!」 魔法で俊足となったガーヴィンが逃げようとしたが、 その足に伏一貴の放った長い鎖が瞬時に巻き付き、顔面から地面へめがけて華麗にスライディング。 「それだけの元気があるのなら丁度良い。一戦付き合え」 「え?ちょっ、ちょっと待ってくださいよ!そらふざけた事は謝ります! てかすんません!ほんますんません!だから決闘の相手だけは・・・・」 「問答無用!」 伏一貴に襟首を捕まれ、ガーヴィンは庭へと放り投げられた。 「いぎゃあああああああああ!!!」 ドガーン! 直後、ガーヴィンの断末魔と庭から響き渡る爆音。 伏一貴に悪戯をして怒らせたガーヴィンの自業自得である。 一時間後、ボロ布だか何だか分からない様な無残な姿のガーヴィンと、 スッキリした顔の伏一貴が戻ってきた。 「・・・えーっと・・・いいですか?」 郵便物を受け取ったリリオンが、二人が戻ってきたのを確認してから恐る恐る口を開いた。 「どしたんだ?リーさん」 「これですが・・・」 そう言うとリリオンは手紙を・・・ 「えっと・・・・簡単に言うとアデン城で『ダンスパーティ』をやるみたいです」 読まずに簡単に説明した。 「ダンスパーティ?何でそんなものを?」 セレスフィアがソファから身を起こす。 「さぁ?ここには城主の気まぐれとしか書いていません」 「ふ〜ん・・・でも面白そうだね」 「俺踊れないぞ?」 「踊り方は自由で良いみたいですよ」 「めんどくせぇなぁ・・・」 「でも、優勝者には好きなドラゴンの鱗20枚って書いてありますよ」 「マジで!?絶対優勝だな!」 「で、課題曲とかあるの?」 「え〜っと・・・『ラメント―雫―』・・・・ですね」 「え!?リオン出られないの?」 後日、リリオンの辞退にセレスフィアは驚いた。 「ええ。審査員任されちゃって・・・あとラスフェスさんもですよ」 リリオンの横で申し訳なさそうにぺこりと頭を下げるラスフェス。 「じゃあ・・・後は・・・」 「ああ。俺も無理」 「私も」 「同じく」 「以下同文」 ゼリアス、ファイデス、魔術師ライフ、ガーヴィンも辞退を申し出た。 「なんで?」 「えーと・・・ダンスの時に流すBGMをやる事になりまして・・・」 「私たちはゼリアスに誘われた訳です」 「まぁ音楽に手を出す良い機会だなーと・・・ほんとは踊れないだけなのだが・・・」 「なんか言った?ガーヴィン」 「いや、別に?」 「じゃあ出る事が出来るのは・・・・私と伏とラス(ラスフェル)とラーだけか・・・」 「それよりもまず、その雫ってどんな曲なんだ?」 「その曲だったら・・・」 ガーヴィンがCDを一枚取り出し、プレイヤーの中にセットした。 皆は静かに流れてきたBGMの、その暗く切ない曲調と歌詞に耳を傾けた。 「へぇ・・・いい曲じゃない」 と、感心した様に呟くラーウィ。 「しかしこれをチョイスした人・・・話が解る人ですね。」 ラーウィの言葉に何度も頷くガーヴィン。 「なぁ、このCD練習するのに借りていいか?」 「いいですよ」 この日から、それぞれの猛特訓が始まった。 「さて・・・私たちはダンスの練習をする訳になったんですが・・・」 「まずはペア決め・・かな?」 「はい!はい!はい!フィアちゃんと!フィアちゃんと!フィアちゃんと!!」 どこぞの小学生みたいにはしゃぐラスフェルだったが・・・ 「・・・・・・(ギロッ!)」 「(ひい!!)」 伏一貴の一睨みを前に縮み上がった。 「ペアは伏一貴×姫、ラーウィ×ラスフェルでいいかな」 「それじゃ・・・基本的な踊り方だけど・・・」 カチッ! 早速プレイヤーにスイッチを入れ、流れるメロディーに乗せて踊るラスフェスとリリオン。 「結構リズムの速い曲ですが、その分優雅さも必要とします」 「ここでリバース&ターン」 一点の乱れも無く、説明を加えながら優雅に踊る二人。 「・・・・っと、こんなもんかな」 「へぇ〜すごいじゃない!」 「そんな特技があったのか」 「まぁ使う機会がなかったですから」 「それじゃあ早速練習しようか」 再び音楽が流れ始め、ラーウィとラスフェルはゆっくりと踊り始める。 そんな中・・・踊り始めるどころか、固まったまま身動きしないペアが・・・ 「あのさ・・・こんな事言うのも失礼だけどさ・・・」 「なんだ?」 「伏・・・踊れたっけ?・・・」 「点鬼簿くわえた白髪少女が神木登ってくぁwせdrftgyふじこ」 「違う!違う!そこは『点鬼簿くわえた白髪少女が神木登って爪立ち絶叫』だって!」 「何で違う曲まで練習してるんだ?」 ドラムのバッチを握り締めて首を傾げるファイデスの疑問に、 「課題曲の他に歌わなきゃいけないんだと」 魔術師ライフが答えた。 「で、ガーヴィンが『歌うんだったら同じ歌手のがいいんじゃない?』って言って」 「それで・・・あぁなったって訳か」 魔術師ライフとファイデスの向けた視線の先には、 歌詞を噛んだゼリアスとそれを指摘しているガーヴィンが映っていた。 「あと、この『耳 鼻 目 口 髪の毛一本 誰にもやらぬ!』 ってところは思いっきり睨みつける様な感じで歌ってね」 「おい・・・そこまで言うなら自分で歌ってくれよガーヴィン」 「分かって無いなー。ギターの人がボーカルって言うのは鉄の掟なのですよ。 エレクトーンが歌うのはソロの時か、すこーしだけなのです!」 「じゃあガーヴィンがギターやってくれ」 「経験者がやるのが一番でしょうが」 ゼリアスとガーヴィンの口論が続く中、 「ライフ・・・デジャヴを見ているような気がするんだが・・・」 「気のせいだったらいいけど・・・この遣り取り五回くらい見たな・・・」 傍観していた二人の脳裏には昔の記憶が渦巻いていた。 「伏・・・踊れたっけ?・・・」 セレスフィアのその一言に眉をひそめる伏一貴。 「愚問だな・・・この俺が踊れない訳が無い・・・と思う」 「なんか言った?」 「なんでもねぇ」 まるで誤魔化す様に伏一貴は強引にセレスフィアの手を掴んだ。 「ほら!やるぞ!」 「はいはい、じゃあいくよ・・・」 ところが・・・踊ろうと1歩足を踏み出した途端に、 ギュッ! セレスフィアの足を踏んでしまった伏一貴。 「つっ!」 「あ、すまん」 慌てて体勢を立て直し再び踊り出すが・・・ ギリ・・・ 軽く捻じ込んだような音で再びセレスフィアの足を踏んだ。 「ぎぁ!」 「うあ、またすまない・・・」 そんな伏一貴とセレスフィアの様子を見ていたリリオンは・・・ 「微笑ましいといえば微笑ましいのですが・・・これじゃコンテストは無理ですね」 顎に手を当て、ため息混じりに呟いた。 「なっ・・・」 「まさかふーさんがこんなに踊れないなんて・・・」 「いやはや私もビックリですな(くっくっく・・・)」 さまざまな反応が周りから飛んでくる中、当の伏一貴は・・・ 「(´・ω・`) 」 「ふてくされた顔・・なのかな?」 「さぁ・・・・(汗)」 「まぁ・・・まだ時間は有りますし・・・一週間後にまた様子を見ましょう」 四日後・・・・ 「嘘をつく貴様らの舌なんて「「「ちょん切って捨ててやる!!!」」」ずっと待つんだー彼を待つんだー」 「良い感じじゃないか。これなら全部あっという間にマスターできそうだな」 「ガーヴィン・・・一ついいか?」 「何だ?ファイデス」 「『幸せを謳う歌』・・・やめてくれないか?」 「何で?」 「あの歌・・・ドラムがきついんだよ」 包帯を巻いた両腕をかざすファイデス。 「別に良いけど・・・『蛹』にするよ?」 「・・・今のままでいいです」 ガーヴィン以外の3人は無言のまま、再びセッションを開始する四人。 追記:『蛹』とは・・・ 一度セッションした時に、 ゼリアスは舌を噛み、ファイデスは手の腱を切り、ガーヴィンは指を攣り、 魔術師ライフが泣き出したという地獄のようにつらい曲の事である。 ファイデス曰く・・・「地獄の方が数倍マシ」 ゼリアス曰く・・・「どこ歌ってるかわからねえっ!」 と恐れられいる曲でもある。 「・・・・右・・・左・・・ターン・・・」 「おーい・・・もしもーし?伏〜〜〜〜〜・・・」 アデンの町を歩くセレスフィアと伏一貴。 伏一貴はリリオンからの指導を思い出しながら歩いているのだが・・・・ 本人はリズムを取っているつもりでも、傍から見るとただの千鳥足状態。 「まったく・・・私だってあんまり踊れないけど・・・」 セレスフィアは伏一貴の少し後ろを歩きながら、ちらりと横目で伏一貴を見る。 褐色の肌は心無しか青くなり、目の下にはでっかいクマ。 ここ数日徹夜で練習していたらしい。 「左・・・左・・・ステップ・・・」 おまけに、まるで呪文の様にボソボソとリズムを呟きながら歩く伏一貴。 「そんなんじゃ体が持たないよ・・・」 ドンッ! 「いたっ・・・あ、すいません・・・」 「なにしやがんだこのあまぁっ!」 伏一貴に気を取られていたセレスフィアは、往来の激しい通りで人にぶつかってしまった。 しかも、運悪く柄の悪そうな奴に。 「おいおーい。どうしたんだよ?」 さらに、ぶつかった相手の仲間が騒ぎに気付いて数人集まってきた。 「この女がぶつかってきたんだよ!」 「あぁ?俺の可愛い弟子に何してやがんだよ!慰謝料払えよ!!」 「いや、待てよ・・・この女なかなかの上玉だぜ!こっちを頂こうぜ!」 「ぎゃはは、良いなそれw」 「俺達がたっぷり可愛がってやるぜ〜〜〜お嬢ちゃん」 ニヤニヤしながら一人の男がセレスフィアの腕を乱暴に掴んで引き寄せた。 「ちょっ!何するのよ!離してよ!!!タダじゃ済まさないわよ!?」 「へぇ・・・なかなか気の強いお姫様じゃねえか・・・俺の嫁にぴったりだぜ!」 「ぎゃはは、兄貴の悪い癖が出たぜwww」 「気が強い女が好きだからな〜〜〜兄貴」 「はぁ?何を勝手な事言ってるのよ!はーーーなーーーせーーーー!!!!」 ゲテゲテと聞くに堪えない下品な笑い声と、セレスフィアの怒声が響く中・・・ 「五月蝿い・・・」 伏一貴がポツリと呟いた。 「あぁ?なんだてめぇは・・・邪魔するなよ」 「何俯いてんだよ、何とか言えよこらっ!」 一人の男が伏一貴の肩を掴もうとした途端・・・ 吹き抜ける一陣の風 響く打撲音 周囲に広がる血と金属の匂い 風が治まると、そこにはガントレットを血に染めた伏一貴と、男の無残な死体が転がっていた。 「な・・なっ・・・・」 伏一貴は無表情のまま、もう一人の男の首を掴み、 「失せろ・・・死にたくなかったらな・・・」 無造作に放り投げた。 男はそのまま石の壁に激突し、ピクリとも動かなくなった。 「俺は今機嫌が悪いんだよ・・・さっさと失せろ」 ジャリッ 伏一貴が一歩踏み出した途端、男たちは蜘蛛の子を散らすように逃げていった。 「お、覚えていやがれ!」 やられキャラのような台詞を残して。 男達が去った後、 「あのさぁ・・・伏」 セレスフィアがげんなりした様に声をかけた。 「なんだ?」 何事も無かったかの様にセレスフィアに視線を向ける伏一貴。 「そんなに辛いんだったら参加やめる?」 「いや・・・鱗は欲しいからな・・・」 「だからってそんなになるまで・・・」 「それに・・・」 「それに・・・?何?」 セレスフィアが顔を覗き込むと、伏一貴は顔を赤くして、 「い、一度ぐらいは姫と踊り・・・なんでもねえよ!」 くるりと踵を返し、ズカズカと歩きだした。 「???」 その後を首を傾げながら追いかけて行くセレスフィア。 ・・・気付いてあげようよ・・・ 七日後・・・ 「それじゃ・・・・見せてもらいましょうか」 緊迫する空気が流れる中で、リリオンが重々しく言った。 「ゼリー・・・具合はどう?」 ラスフェスはエレキをいじっているゼリアスに問いかけた。 「良い具合ですよ。ようやくノーミスで出来る様になったかな」 「一番ミスっていたのはゼリアスだったけどな」 クックッと笑うガーヴィン。 「そんな事言ったって、エレキを弾きつつ歌うのって辛いんですよ!」 「そんな事より、伏さんのテスト&リハだっけ?さっさとやろうよ」 また喧嘩になりそうな雰囲気を遮り、魔術師ライフがベースを軽く鳴らした。 「えっと・・・雫だっけ?それじゃあいくよ」 ガーヴィンが弾くようにエレクトーンの鍵盤を鳴らす。 一つ一つ意味を成さないつたない音が、少し流れて、帯を曳くように消え・・・ ヴァイオリンの音を割り振った鍵盤から一気に旋律が流れ出し、 それに合わせる様にベースとドラムが鳴らされる。 音に合わせて踊り出すセレスフィアと伏一貴。 「指さした先の上枝に明か――――「ストップ」 ゼリアスが歌おうとするのを、何故か急にリリオンが止めた。 「リオン?駄目だった・・・?」 「俺・・・なんか間違えたか?」 「いや?特には・・・」 セレスフィアの不安げな声と、ゼリアスのうろたえた声がリリオンに向けて同時に発せられる。 「いや。さっきので良く分かったしな。確かにまだ優雅さには欠けるけどさ―――――・・・」 リリオンはハッとした様に一度口を閉ざし・・・ 「まぁそれぐらいなら恥ずかしくない踊りも出来るでしょう」 いつもの口調に戻ると、外套を翻し自室へと戻っていった。 リリオンの以外な一面を見た一同は、暫くポカンとその場に立ち尽くしていた。 「リーさんって・・・あんなキャラだったか?(汗)」 数分後、やっと伏一貴が冷や汗を浮かべながらボソッと呟いた。 「思わず地が出たとか・・・・?」 引き攣った顔でゼリアスが答える。 「情緒不安定なんじゃない?」 ファイデスも答えたが、他の皆は口を閉ざしたままだった。 当日・・・ アデン城の中はとても賑やかだった。 盛大なダンスパーティーともなれば、大小様々なクランが各地から集まっていた。 「へぇ・・・結構賑わっているんですね」 純白のタキシードを着たリリオンがシャンパンのグラスを傾けながら周囲を見回す。 「でも真っ白って・・・リリオンさん趣味悪すぎますよ」 傍らにはスタンダードなタキシードに身を包むラスフェス。 「仕方が無かったんですよ・・・・これしか無かったもので」 「しかし・・・姫と伏さん遅いですね」 ワインレッドのドレスに身を包んで心配そうに周囲を見回すラーウィ。 「まぁ・・・時間にはまだまだ余裕はあるからな」 白と赤をメインに彩られた正装を着ているラスフェルが時計を指差した。 「よし・・・最終チェックオーケイ」 「弦は大丈夫?」 「ああ、でもガーヴィン・・・」 「なに?」 「お前それはないだろ・・・」 ガーヴィンは背中に『大見解』と描かれたジャケットを羽織っていた。(他はタキシード) 「しゃーないだろーが。まともなやつがこれしか無かったんだからよ」 「でも流石に浮きすぎだぜ・・・」 「あう・・・やっぱ着替えてくる」 「「「そうしとけ」」」 そそくさと着替えに戻るガーヴィンの後姿を、 魔術師ライフ、ゼリアス、ファイデスの3人は生暖かい目で見送った。 「ふう・・・まだ時間はあるな」 スタンダードなタキシードに身を包んだ伏一貴が一息入れる為に煙草をくわえる。 「だね〜・・・って、折角のタキシードに匂いが付いちゃうよ」 青を基調としたドレスを纏いながら、セレスフィアが伏一貴から煙草を取り上げた。 「一服ぐらいさせてくれ・・・・練習しすぎて疲れてるんだよ俺は」 「駄目!それにそろそろ会場の方に行かないとね」 「ち・・・・」 伏一貴が渋々と煙草を直したその時、 「伏一貴!出てきやがれええええ!!!」 アデン城の正門から叫び声が響いてきた。 「なんだ・・・?」 名指しで呼ばれた伏一貴は首を傾げる。 「あ、この声・・・この間伏がイライラして倒しちゃった・・・」 「・・・ああ、あいつらの仲間か。大方お礼参りといったところか」 「どうする?」 「ほおっておいても良いが・・・乱入されて会場を滅茶苦茶にされるのは迷惑が掛かるしな」 不機嫌そうに呟くと、伏一貴は既に正門の方に駆け出していた。 「相変わらず・・・妙なところで律儀だな〜」 苦笑しながらセレスフィアも後を追った。 「そろそろ始まりますね・・・」 リリオンがため息をつく。 「でもまだ伏さんと姫が・・・来ていませんね・・・・」 顔を曇らせるラスフェス。 「まぁ・・・急に始まる訳じゃないので大丈夫かと・・・」 ゼリアスが二人をなだめる様にフォローを入れる。 「確か数曲やってから・・・だよな」 ガーヴィンもフォローに回るが、 「ああ。それまでに伏さんと姫が来る事を祈るしかないな・・・」 ファイデスの言葉に、一同は心配そうに刻一刻と進む時計を見上げた。 「来てやったぞ」 正門の前には数十人の柄悪い男たちが待ち構えていた。 「ギャハハハハ!!何だその服!!馬子にも衣装ってやつか!」 「おう、気の強いお姫様も一緒かよ!今日は一段と綺麗だな・・・よだれが出てくるぜw」 「・・・・・・・」 「下らん事に時間を割く必要は無い。まずは誰から死にたい?」 鋭く睨みながらボキボキと指を鳴らす伏一貴に、一瞬男たちは怯んだが、 「へ・・・へへ・・・今日はビッグゲストを呼んでるぜぇ・・・先生!お願いします!」 男達が1歩後ろに下がったかと思うと、 身の丈2メートルを越すんじゃないかという鎧に包まれた大男が現れた。 「このお方はなぁ・・ゼータマーク2さんだ。お前なんかあっという間にぶちのめすぜぇ」 「ふぅん・・・・・・で、最初に死ぬのはそいつで良いんだな?」 だが、そんな大男の登場に、まるで興味無さそうに伏一貴は吐き捨てた。 「さぁ!この生意気な奴をぶちのめしてやって下さいよ先生!」 「ウガーーー!!!」 大男が雄叫びを上げながら、 片手で持った二刀流のバーサーカーアックスを伏一貴の頭上に振り下ろす。 「・・・」 伏一貴は体を少し捻ると、無表情のままあっさりと攻撃を交わし、大男の体の間に潜り込んだ。 「ウガアアアアア!!!!」 更に雄叫びを上げて、斧を振り下ろすゼータ(以下略)。 しかし、伏一貴は避けるばかりで一向に攻撃をする様子が無い。 「どうしたどうしたー?おまえも先生には敵わねぇのか〜〜?」 「逃げてばかりで恐ろしくなったんじゃねーのか?ぎゃはははは」 「さっきまでの減らず口はどうしたんだ〜?チキンか?ww」 周りから罵声や嫌味が叫ばれる中、それでもひらりひらりと攻撃を交わし続ける伏一貴。 (おかしい・・・まるでわざと時間を稼いでる様な・・・・・・ん?) ハラハラしながら見ていたセレスフィアは、ふと何かに気付いた。 タン タン タン タタン (!?・・・このリズム!) 伏一貴が攻撃を交わす際に刻んでいたリズム。 それは、今日踊るダンスのリズムだった。 一週間近い特訓は伏一貴の体に自然と染み込んでいた。 「ウガ・・・はあ・・・はあ」 大男の方は、やたらめったら斧を振り回しているからか、疲労の色が滲み出していた。 「先生!何やっているんですか!こんな奴一瞬で・・」 「はぁ・・・・・はぁ・・・ま、任せ・・・・ぐがっ!?」 「はああああ!!!」 まるで、この一瞬の息の乱れを狙っていたかの様に、伏一貴が動いた。 魔力を込めた掌底 それはゼ(以下略)の顎を打ち据え、脳震盪を起こさせた。 脳を揺らされたゼ(以下略)はグラグラとよろめき・・・・ ズシーン! 音を立てて倒れた。 「先生!?」 周りの者は一瞬の出来事に呆気に取られたが、すぐに伏一貴へと目をやった。 「おい、お前ら・・・・・・死にたいならかかってこい」 「ひぃ・・・」 「す・・・すいませんすいません!もうしません!勘弁して下さい!」 男達は、全員が冷や汗を流しながら顔面蒼白にして脱兎のごとくその場から逃げ出した。 「やれやれ・・・」 「お疲れ、伏」 「おぅ・・・ちっ、少し服が汚れたな」 「大丈夫?いけそう?」 「ああ・・・げっ、今何時だ!!」 「あぁ!!!急がないと!!!」 「走るぞ!!!」 伏一貴は素早く服を叩いて汚れを落とすと、セレスフィアの腕を掴んで走り出した。 しかし・・・・・ 「優勝はネコまっしぐらクランのササミさんとマグロさんです!!」 ダンスパーティーは既に終了していた。 「あ・・・」 「終わっちまったか・・・」 「残念だったね・・・」 「あぁ・・・そうだな」 伏一貴の少し寂しそうな顔に、セレスフィアも俯いた。 「では、優勝したお二人の踊りをもう一度ご覧下さい!・・・曲は『ラメント―雫―』」 (あ・・・) セレスフィアがそっと伏一貴の手を握った。 「姫・・?」 「あのね・・・ここで踊らない?」 「ここで?」 「うん・・・駄目かな?」 人気の無いバルコニーの踊り場に、BGMの旋律が響き渡る。 「そうだな。今からじゃ間に合わないし」 二人は静かに寄り添い、踊り始める。 「上手くなったね」 「ああ」 「伏・・・何であんなに頑張ったの?」 「鱗が欲しかったからな」 「それだけ?」 「後・・・セレスと踊りたかった」 「え・・・」 「俺は俺なりにセレスの事を愛している。 ルフィアンとは形が違うかもしれないけどな。セレスの事を精一杯愛している」 「伏・・・・セレスって・・・」 「だからこの話が来た時は嬉しかった。セレスと踊れるからな」 「は、恥ずかしいよ・・・」 「誰も居無いはずだぞ?それに・・・俺は見られても構わないがな」 「もぉっ!」 「まだ・・・」 「ん?」 「俺はセレスの傍に居ても良いのか?」 「嫌だったら・・・こんな風に一緒に踊ったりしてない・・・」 「・・・・ありがとう」 日が落ち、音楽が止んでもいつまでも踊っている二人。 「あ・・・・それから、セレス」 「何?」 「二人の時は一貴と呼べよ?」 「っ!!!」 バルコニーの踊り場に浮かんだ二人の影が静かに重なる。 それを見ていたのは空に輝く星だけだった・・・。 後日談 「ラスフェル待ってよー」 「じゃあその手に持っているナイトバルドの仮面を置け!」 「でもこれを体内に取り入れればすさまじい力が・・・それに仮面を発動させるときかっこいいし」 「じゃあさっき悶絶していたのは何だ!」 「・・・・とりあえず実験台になってよー」 「流すな!」 必至の形相で逃げるラスフェルと、 仮面を持ったガーヴィンが追いかけっこをしているのはアジトの中 「ガーヴィンーそのへんにしとけー」 「でもあの発明はすごいよなー」 「金欠だったら絶対できませんよね」 「やっぱりダンスパーティーのバイト代がよかったからな。俺もギター新調できたし」 ラスフェルに馬乗りになり、 今にも仮面をつけようとするガーヴィンを羽交い絞めにしながらゼリアスはいった。 「・・・・・」 「どうした?ライフ」 「いえ・・・関係ないんですけど・・・姫と伏、なんとなくおかしくありませんでした?」 「ああ。コンテスト終わったってのにやけに幸せそうなオーラを放っていたよな」 「最近では人気の無い所でイチャついてるらしいしな・・・・姫〜カムバアアアアク!!」 「ふーさん〜俺のものになるんじゃなかったのか〜!!」 「そこ、ホモらない!!」 「俺なんてまじないまでして二人を引き裂こうとしたんだぞ」 「まじない?」 「ああ、ガーヴィンに借りたまじない書でな」 「その手順・・・教えてくれません?」 ・・・・・(説明中)・・・・・ 「・・・・っていう感じで」 「・・・・・」 「? どうした?」 「んと・・・大変言いにくいのですが・・・」 「・・・まさか・・・」 「まじない・・・間違ってますよ・・・」 「マジで・・・・?」 「その方法だと・・・より絆を強くするものかと・・・」 「・・・てことは・・・」 「入り込む隙がなくなりましたね・・・ご愁傷様」 「・・・・・うわああああああん!!!!!」 涙を振り撒きながら外へと駆け出していくラスフェル。 それを追いかけて行く者は誰もいなかった・・・・・。 「ゼリアス、ミカンヨーグルトと焼きプリンとフルーツゼリーとって」 「いっぺんに食う気か?太るぞガーヴィン」 「いいのいいの。また動くから」 「・・・少しくぐらいラスさんの事を気にかけてあげましょうよ」 「なんか雄たけび聞こえなかった?」 「さぁ?気のせいだろ」 「日が昇ってきて暑くなってきたね伏・・じゃなくて一貴」 「ああ」 「そろそろ部屋に戻らない?」 「ああ」 「・・・・・そろそろ抱きついたままでいるのやめてくれない?」 「却下」 「却下って・・・一言で拒否かい!」 「うるせぇな・・・・俺はセレスの傍に居れればいいんだよ。文句あんのか?」 「むぅ〜〜〜〜///(顔真っ赤)」 |