「・・・・・・・・・はぁ」 何度目のため息だろうか。 クランの仲間たちは一人残らず出かけていて静まり返ったアジトの中。 セレスフィアは自室の机にうつ伏せで寄りかかりながら、浮かない顔をしていた。 「やばいな・・・」 机の上に置かれた数枚の原稿用紙を恨めしそうに睨みつける。 「もうすぐ血盟の2周年記念だというのに・・・劇のネタが思いつかん」 『思いつかなくて良いっ!』 「・・・今幻聴が?」 気のせいです。 「うーん・・・どうしたものか・・・」 書きかけの途中で止めたのであろう、 丸く握り潰されてゴミ箱から溢れた原稿用紙の無残な姿が、部屋のあちらこちらに散乱している。 「あー・・・・駄目だ・・・少し休もう(ぐったり)」 さらに数枚の原稿用紙を握り潰してゴミを増やし、 フル回転で使っていた脳は疲れていたのか、すぐに睡魔が襲ってくる。 ベッドまで行くのもめんどくさくなって、そのまま机に体を預けて少し眠ることにした。 「ただいま〜!・・・って、あれ?」 狩りから帰ってきたルフィアンは、しーんと静まりかえったアジトの中を見て首を傾げた。 「フィア〜?居ないのか〜〜?」 自分が出かける前に「今日はずっとアジトに居るよ」と言っていたセレスフィアの言葉を思い出す。 何か仕事があるとか言っていたが・・・ 気分転換に出かけたのか? 一通りアジトの中を見渡して、ふとセレスフィアの部屋の明かりが目に付いた。 明かりを点けたまま出かけたとは考えにくい。 コンコン・・・ 「・・・・・・・・・・・・」 軽くノックをしてみたが、中から何の反応も無かった。 ドアに鍵は掛かっていなかったのでそっと開ける。 「・・・・・・・なるほど(苦笑)」 ドアから少し離れた部屋の中央にある机の上で、ぐっすりと眠るセレスフィアの姿を発見し、 思わず口元に笑みがこぼれる。 そっとしておこうとも思ったが、そのまま机で眠らせるのと風邪を引くだろう。 「ベッドまで運ぶか・・・」 起こさない様に注意しながら、セレスフィアに歩み寄ろうとしたその時、 クシャッ 何かを踏みつけて思わず足元を見る。 「紙・・・・?」 良く見ると、部屋のあちらこちらに無造作に散乱した紙の山。 何となく、踏みつけた紙を拾い上げて開いてみる。 ----------アトモス2周年企画---------- 走り書きしたのだろうか。 1行だけ無造作に書かれた文字。 何だか嫌な予感がしながらも、床に散乱している紙の山からさらに数枚拾い上げて開いてみる。 -----------劇の項目予定--------------- ○暴れん坊将軍 ×ロミオ&ジュリエット ×シンデレラ △頭山の金さん ×刑事物 ・ ・ ・ (神様、仏様、アインハザード様・・・俺は今激しく後悔しています!) 見なければ良かったと項垂れるルフィアンを横に、 セレスフィアは起きる様子も見せずに幸せそうに寝息を立てていた。 その日、次々とアジトに帰ってきたクラン員たちは、 背後になにやら重い空気を抱えて無言でリビングのソファーに座り込むルフィアンの姿を見たらしい。 翌日。 「ふぁ〜・・・・あっ!」 目を擦りながら起き上がったセレスフィアは慌てて窓の外を見た。 「やば〜・・・少しだけ眠るつもりが一晩寝ちゃった・・・」 窓の外は少しだけ明るくなった青空が広がっていた。 「ん〜・・5時か・・・って・・・あれ?」 手元の時計が午前5時を指しているのに頭を抱えながら、 ふと自分がベッドの上で寝ていた事に気付く。 確か、机の上で寝てしまったような・・・ 「まぁ・・・いいか!」 細かいことは気にしない楽観主義なので、大きく背伸びをして再び机に向かう。 運んでくれたルフィアンが不憫だ・・・ 「ん〜何か頭もスッキリしたし!ネタが思いつくかも〜〜♪」 昨日とは打って変わって猛スピードでペンを走らせる。 早朝5時、鼻歌を歌いながらセレスフィアが机に向かっている頃、 まだ眠りについていたクラン員たちは嫌な夢にうなされていた。 この日、大勢のクラン員たちが寝不足だったのは偶然では無いだろう。 日付は変わって、2005年7月3日。 ☆ATMOSPHERE☆血盟に2回目の誕生日が訪れた。 クラン員たちへ手紙を送る為に放った鳥の群れを見上げながら、 セレスフィアは満面の笑みを浮かべていた。 「ふふふ・・・さて、準備に取り掛かるとしますか(にやり)」 無事に2周年イベントのお知らせを書いた手紙が全員に届けられた頃、 「ルフィ、一つ聞いていいか?」 オーレンの人通りの少ない場所まで連れてこられたルフィアンは、 伏一貴(フセカズキ)に双剣を突きつけられていた。 「・・・物騒だな伏(汗)いったい何のつもりだ?」 「隠さずに吐いてもらう為にな・・・お前、何か隠してるだろ?」 ぎくっ! 明らかに動揺するルフィアンの顔色を、伏一貴が見逃すはずがない。 「言え・・・隠そうとすれば殺す」 伏一貴・・・アトモスでは一番敵に回したくない男。 普段、騒がしいクラン員たちの中に自然と溶け込んでいるので分からないが。 怒らせると一番手が付けられない・・・というか自分の命が危ない。 (姫にはいつもからかわれてるけどね) (うるせぇ!) (最近壊れてきたって噂だけどな・・・) (姫のみならず皆からはネタDEと言われ始めてるしね〜・・・) (てめーら・・・全員ぶっ殺す!)
「はぁ・・・分かった。言うから双剣しまってくれ(怖いから)」 やはりルフィアンも自分の命は大事だ。 伏一貴が双剣を腰の鞘に戻すのを確認した後、ルフィアンは一息ついて話を始めた。 「フィアから2周年イベントの知らせは来ただろ?」 「ああ・・・ついさっきな」 「そのお知らせは偽りだ」 「・・・どういうことだ?」 「つまりな・・・イベントはイベントでも・・・」 ルフィアンが全てを言い終える前に伏一貴は悟ってしまった。 去年の悪夢が脳裏をよぎる・・・ 「なるほど・・・そういうことか」 今から何が起るのか分かってしまえば話は早い。 全力で・・・絶対っ!逃げてやる!!!
ルフィアンをその場に残し、アジトに戻った伏一貴は素早く荷物をまとめて姿を消した。 -----暫く旅に出る、探さないでくれ------ そう書かれた紙切れだけを残して。 数分後、姿の見えない伏一貴を探しにきたセレスフィアが紙切れを見つけて悔しそうに舌打ちした。 「ちっ・・・今回はまんまと逃げられたか・・・」 伏一貴が逃げた・・・つまりそれは他の者にその分の被害がいくという事。 「まぁいいわ・・・代わりはいくらでもいるからね・・・」 『マジで勘弁してください!』
ルフィアンがアジトに戻ると、何も知らない仲間たちがすでに集まっていて楽しそうに雑談していた。 「イベントって何をするんだろ〜楽しみ〜♪」 「リラ、オレンジばっかり食べてないで他も・・・」 「いらな〜い♪」 オレンジが盛られた籠を目の前に幸せそうなカルリラとそれを呆れたように見ているスタパラ。 「そういえば、誰もイベントの内容を聞いていないんですよね?」 ふと疑問に思ったのか、ガーヴィンの一言。 もちろんその質問に答えられる者は誰一人として居ない。 ルフィアンは知っているが、教えることはできない。 教えたところで皆が逃げるのは目に見えている。 フィアを怒らせたら俺の身があぶねぇ・・・(本音) 「早苗・・・俺、何か今朝から嫌な予感がするんだけど・・・」 「ヤヌ・・・たぶんその勘は当たるだろうね」 「?」 早苗嬢(サナエジョウ)には何が起こるか予想はついていた。 伏が姿を現さない事から逃げたんだと思い、予想は確信へと変わる。 Janusu(ヤヌス)はどうやら勘は働いたようだが、今まで被害に合っていない為に確信まではいかないらしい。 「フィアちゃん早く来ないかな〜〜〜v」 毎回被害にあってるラスフェルだが、 今日の為に用意したプレゼントを渡した時のセレスフィアの喜ぶ顔を想像でもしてるのか。 それとも、単に分かっていないだけなのか。のほほんとしていた。 「リリオンさん、こっちのワインもいけますよ(にっこり)」 「ありがとうございます、洋パパさん(にこにこ)」 リリオンと洋パパはお互いに違うワインを交換して飲み比べ中。 「俺もお酒飲みたい・・・」 「Ajさん・・・私たちは未成年だからジュースで我慢です・・・」 リリオンと洋パパを恨めしそうに見るAjqkjとバルファーレ。 凄く平和な光景を繰り広げるアジトの中。 だが、これから起こる悪夢を想像するとルフィアンはガックリと肩を落とした。 皆の未来に幸あれ・・・・ 無理な願いです。 「皆お待たせ〜」 リビングに顔を出したセレスフィアに一斉に視線が集まる。 しばしの沈黙。 誰かがぽつりと呟く。 「姫・・・その・・・格好は・・・?」 悪夢の幕開けだった。 サングラスをかけ、メガホンを片手に現れたセレスフィアの姿にクラン員たちは唖然と立ち尽くしていた。 「さぁ、始めるわよ。アトモス2周年イベント・・・{暴れん坊将軍}劇をね!(爽やかな笑顔)」 あまりにも爽やかに笑うセレスフィアを前に、この時皆が心の中で同じ事を思っていた。 今すぐこの場から逃げ出したい!!
もう手遅れですから。(合掌) もちろん逃げ出そうとした者も数名いた。 だが、玄関のドアの前に立っていたルフィアンが剣を構えたのを見て息を飲む。 (ルフィ!裏切り者〜〜〜〜〜!!!) (すまん・・・俺はフィアには逆らえねぇ・・・諦めてくれ) _l ̄l○←今一番表現しやすいクラン員たちの心の叫び
もう言葉にもならない。 「配役は今から貼るから各自確認してね〜」 壁に貼られた1枚の紙。 配役を見たクランたちの顔には絶望の色がしみじみと現れていた。 「アクション1 スタート!!」 城の門をこっそりと通り抜けようとした者の後ろに、 息を切らせながら怒涛の勢いで追いすがる人物の姿。 「上様!またお忍びで城を抜け出すつもりですねっ!許しませんぞ!!」 「げっ、じぃ・・・」 「げっ とは何ですか!じぃの目が黒いうちは・・・」 (なんで俺じぃさんの役なんだ・・・) (諦めろガーヴィン・・・フィアちゃんが決めた配役だからな) (そりゃラス王子は主役だから文句ないでしょうけどね・・・) 「・・・・・・・・成敗!!」 ザシュッ
「なっ!う、上様・・・・ぐはっ!!」 「よくやった・・・下がれ」 「「はっ!」」 (しかも出だしで殺されるってどういうことですかね・・・/遠い目) (まだ台詞が多いから良いじゃない・・・私とパパなんて・・・) (俺とファーはくの一と忍者だけど・・・一言しか台詞ないしね・・・) (何か哀れだな・・・バルファーレ、洋パパ、ガーヴィン・・) これぞ本当の暴れん坊将軍。(ありえねぇ) 「アクション2 スタート!」 舞台は変わって、め組の家。 「おぅ!新さんじゃねぇーか」 「お邪魔するよ頭」 「いらっしゃい、新さん!」 お忍びで町に出かけるときは、将軍の身分を隠して徳田新之助(トクダシンノスケ)と名乗っている。 だが、め組の頭とその女房である女将さんだけは正体を知っている。 (め組の頭か・・・ちょっとカッコイイ役かも・・・) (まだまともな役で良かったねヤヌ・・・) (そういう早苗も女将さんならまだマシな役だな・・・) (数名・・・可愛そうな役の人もいるしね・・・) 自分たちは神に感謝しよう!
「そういえば新さん、最近この辺りで噂されてるんだけどね」 「どんな噂ですか?」 女将の話では、最近この辺りで女性やお年寄りばかりを狙った盗賊が悪さをしているということだった。 「町の皆は迷惑しててねぇ、新さんも気をつけておくれよ」 「まぁ、新さんなら盗賊に会っても反対に退治してしまうだろうがな!」 「はは、気をつけておくよ」 和やかな雰囲気で会話をしていた3人が居るめ組の家の前で、 「キャーーーーーーーー!!!」 突如響いた女性の悲鳴。 「新さん!」 「ああ・・・」 慌てて外に出てみると一人の若い女性が盗賊に追われていた。 「おんな、逃げても無駄だ!うへへへ」 「いやぁ!来ないで!!」 「親分〜早く捕まえましょうぜぇ〜げへへへ」 (あの・・・なんで私は女役なんでしょう・・・/汗) (リオンさんならまだ女に見えるからじゃないですか・・・俺なんて俺なんて・・・) (諦めろ・・・Aj・・・) (ルフィさんは嫌じゃないんですか!?盗賊ですよ、盗賊!) (俺はフィアには・・・(以下略)) 盗賊の親分=ルフィアン 子分=Ajqkj あわや女性が盗賊に捕まるかと思われた瞬間、横から素早く間に入った者が居た。 「あぁ〜ん?何だてめぇは!」 「悪事を見逃す程、俺はお人良しじゃ無いんでね・・・」 徳田新之助と盗賊の乱闘が始まった。 「アクション3 スタート!」 舞台は目まぐるしく変わるものです。 ということで、いきなり代官の屋敷。 「お代官様、お客様がお見えです」 「うむ、通してくれ」 「お代官様、ご機嫌麗しゅう」 「もっとちこう寄れ、みかん屋」 (なぜにみかん屋?) (さぁ・・・リラだからじゃないのか?) (スタが悪代官って・・・何か面白いね♪) (全然面白くも何ともない・・・) まったくその通りだ!
「今日はどうしたのだ、みかん屋」 「はい、実はお代官様にご相談がありまして・・・」 そっとみかん屋が代官の前にみかんが大量に入った籠を差し出す。 もちろんみかんの下には小判が敷き詰められているのだが。 「ほう・・・何なりと言ってみよ」 「では・・・」 バタン! ドンドンドンッ!! ピーーーーー(?) 「!?」 「な、何事だっ!」 みかん屋が口を開きかけた時、急に外が騒がしくなった。 突然の奇妙な騒音に目を白黒させる悪代官とみかん屋。 「悪巧みはそこまでだ、悪代官!」 「何者!」 (ていうかさっきの音は何だラス?) (ああ、あれはな、「バタン」がドアで「ドンドンドン」がピストル。 「ピー・・・」は、炊飯ジャーのご飯が炊けた音) (・・・・・・・・・・・これ時代劇だよね?) 細かいことは気にするな☆(親指ぐっ)
「お前たちの悪巧みは全てこの盗賊たちから聞いた!」 「「お代官様〜〜〜」」 実は先程、あっさりと盗賊を締め上げた徳田新之助は、その盗賊から悪代官の話を聞きだしていた。 みかん屋が代官に多額のお金を払う代わりにこの町のみかんの権限をずべてもらい。 尚且つ、悪代官に貢ぐ為のお金を盗賊たちに稼がせていたらしい。 「ち・・貴様いったい何者だ!」 (ばれてしまっちゃショウガナイ) (始末しちゃえばいいことだし?) 「・・・・・・代官、余の顔を見忘れたか?」 「はぁ?・・・・・・・」 「はい、そこですかさずBGM!」 ジャジャジャーン! ジャ ジャ ジャ ジャーーーーーーン♪ (それ・・・オープニングのBGMですが・・・) だから、細かいことは(以下略) 「う、上様!!」 「「上様?!」」 「そう、徳田新之助とは仮の姿。実は将軍です☆」 ☆つけても可愛くないです・・・新さん。 「まぁ、そういう訳だからサクッと死んで下さいな」 「「は?」」 ザシュ! メキメキ ゴキッ!!
こうして悪代官はサクッと成敗され、町には平和が戻ったそうな。 「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」 「ブラボーーーーこれぞ本当の暴れん坊将軍だわ!!」
無言で地面に両手をついて重い空気を背負うクランたちを尻目に、一人感動しているセレスフィア。 「ねぇ・・・皆・・・今同じ事を思っている人?」 背後に黒いオーラーを纏いながら、早苗嬢がゆらりと立ち上がる。 ノノノノノノノ←全員が挙手
「「「てめぇが成敗されろ!!!」」」
「あぎゃああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」 ☆ATMOSPHERE☆血盟2周年目の記念すべき日。 アトモスのアジト周辺、半径10メートル付近の住民たちはセレスフィアの断末魔を聴いた。(近所迷惑) おまけ 「やっぱり逃げて正解だったか・・・・」 アトモスのアジトの屋根裏で伏一貴はため息をついた。 実は旅に出たと見せかけて、ちゃっかり屋根裏から様子を覗っていたのだ。 今回、真っ先に逃げた人物はセレスフィアの断末魔をBGMに、屋根裏で優雅に煙草をふかせていたそうな。